レースは、シュアハピネスが逃げ、シャワーパーティー、ミヤビリージェントがそれぞれ2、3番手につける展開で始まった。注目のアグネスタキオンは好位の5番手。ゲート入りの際に嫌がるそぶりを見せたため、目隠しされて入ったことで不穏な空気が流れたが、まずは無難なスタートであった。人気の一角ダンツフレームはほぼ中団、スタート直後に躓いたジャングルポケットは、後方からの競馬を強いられていた。
前半1000メートルの通過ラップが59秒9というよどみない流れの中、アグネスタキオンはいつものように3コーナーあたりで外に持ち出し馬なりで上がっていった。4コーナーを回るときはすでに3番手まで押し上げている。
そして直線。これまでの3戦は、このあたりから爆発的な脚で伸びていったのだが、心なしかいつものようなパワーがない。
平成13年4月15日「皐月賞」(中山芝2000) これまでのような伸びが見られない。後続を抑えきることはできるのか……
とはいえ、早めに先頭に立っていた分だけ余裕があった。ダンツフレーム、ジャングルポケットの追撃を振り切り、先頭でゴールに飛び込んだのである。
「とにかくホッとしました」
勝たなければならないレースだっただけに、河内が最初に覚えたのは安堵感であった。
平成13年4月15日「皐月賞」(中山芝2000) 猛追するダンツフレーム、ジャングルポケットを何とか押さえ切って先頭にゴールに飛び込んだ。
筆者はこのレースを目の前で見ていたが、そのとき感じたのは「思っていたほど強くない」ということだった。
2着以下につけた1馬身と2分の1という着差は、数字上は楽勝と評価してもいいだろう。しかし、「次元の違う馬」といわれていたアグネスタキオンからすれば、内容的には少々不満が残るものであった。これまでのように、他馬とのレベルの違いを感じさせる圧倒的な競馬をしたようには見えなかったのである。記録を調べてみると、過去3戦すべてで出走馬中最速の上がりをマークしていたにもかかわらず、皐月賞では2、3着のダンツフレーム、ジャングルポケットばかりか5着のダービーレグノよりも遅かったのだ。
実は、当の河内もレース内容自体には不満を感じていたらしい。
「なにか物足りなかったんですよね。本来なら、もっと弾ける馬でしたから」
と、皐月賞を振り返っている。
レースの直後、筆者はアグネスタキオンの先行きに不安を感じたことを鮮明に覚えている。
平成13年4月15日「皐月賞」(中山芝2000) まずは一冠目を獲得。これから先、もっと大きな舞台が待っているはずだったのだが……
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