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底が知れない史上最強マイラー
Contents
最強マイラーの称号
遅いデビューと連勝街道
マイル王へ
短距離界の頂点へ
展望
ドーヴィルでの快挙
その後
可能性
Chapter 6
ドーヴィルでの快挙
 前年、藤沢和雄はタイキブリザードでブリーダーズカップ・クラシックに挑戦したが、見せ場もない惨敗を喫していた。その原因を分析したとき、「自分をはじめとする人間の気負いすぎ」という点が浮かび上がってきたのである。普段は馬なり調教が中心なのに、気負うあまり、目一杯追うというような「らしくない」体勢で臨んだのだ。 
そんな教訓を得た藤沢は、平常心で臨むことを心がけていた。ジャックルマロワ賞は8月16日だったが、タイキシャトルが渡仏したのは7月21日。「もっと早く向こうに行って、環境に慣らしたほうがいいのでは?」という声も出ていたが、藤沢は「日本で使うときと同じように」と考えていたのである。調教もいつもどおりに馬なり中心で、移動時期もそれほど早めではなかった。その甲斐あってか、フランスに渡ったタイキシャトルは、イラつくことなく終始リラックスしていたという。
 周辺が俄然騒がしくなってきたのは、レースを1週間前に控えた頃であった。シーキングザパールが一足先にモーリスドギース賞を制したことで、タイキシャトルにかかる期待がさらに膨らんでいたのである。いや、期待というより、むしろ「勝って当然」という雰囲気すら出始めていたといったほうが正解かもしれない。両馬の日本での実績を比較すると、断然タイキシャトルのほうが上回っていたからである。結局、タイキシャトルは単勝1.3倍の圧倒的1番人気に祭り上げられていた。瞬間風速で1.1倍まで行ったほどである。
「まるで、日本のレースに出たときのようなオッズだな……」
 藤沢は苦笑するしかなかった。
 レースを先導したのはケープクロスであった。9番人気の低評価ながら、GIのロッキンジステークスを制した馬である。タイキシャトルは、レース前半に物見をするしぐさを見せてはいたものの、いい感じで2番手を追走していた。
 ドーヴィルのマイル戦は直線だけのコースである。それだけに仕掛けどころが難しい。鞍上の岡部幸雄がケープクロスを交わしにかかったのは、残り100メートルを切ったあたりだった。ただ、勝手が違っていたのは、日本のレースならここで楽に引き離せるはずなのに、逃げ馬がしぶとく食い下がってきたことである。おまけに、馬場の真ん中を通ってアマングメンが猛追してくる。この馬はGIサセックスステークスの覇者で、2番人気に推されていた馬である。いわば、タイキシャトル最大の強敵だったのだ。
ゴールまであとわずか。タイキシャトルはここで最後の力を振り絞った。先頭に立ったあとついに抜かれることなく、アマングメンを半馬身だけ抑えて激戦を制したのである。そして3着には頭差でケープクロス。ついに悲願の海外GIを勝ち取った瞬間であった。