天皇賞で死闘を演じたダイワスカーレットは、この年のラストランに有馬記念を選んだ。天皇賞のあとジャパンカップに全力投球したウオッカ、ディープスカイ(それぞれ3、2着)はグランプリを回避している。彼らに替わる強敵と目されていたのは、前年の覇者マツリダゴッホ、ジャパンカップで一躍スターダムにのし上がったスクリーンヒーロー、そしてGI4勝の古豪メイショウサムソンといったところであろうか。それでも、天皇賞の印象が強烈だったことから、ダイワスカーレットが並み居る牡馬陣を押さえて1番人気に推されている。
有馬記念でも、例によってダイワスカーレットが先手を取った。ただし、走りっぷりは天皇賞と大違いで、ピタリと折り合っている。一方、最大の強敵と目されていたマツリダゴッホが、外に膨らんだスクリーンヒーローのあおりを受け、終始後手後手の競馬をするハメになった。レース後、国枝調教師が「ウチの馬だけ2600メートルの競馬をしたみたいだ」とコメントしたほどの、不細工な内容だったのである。
こうなると、行く手を阻むものは誰もいない。ダイワスカーレットは最後までしっかりした脚色で走り抜き、アドマイヤモナーク以下に1馬身4分の3をつけて先頭でゴールに飛び込んだのである。まさに完勝というべきであろう。いかに有馬記念といえど、「宿敵ウオッカがいないとなれば、負けてはいられない」といったところであろうか。
2008年12月28日「有馬記念(GI)」(中山芝2500)
1年を締めくくるグランプリで、牝馬ながら堂々の1番人気に推され、それに応えて快勝。
2008年12月28日「有馬記念(GI)」(中山芝2500)
牝馬の有馬記念制覇は、71年のトウメイ以来37年ぶりの快挙。これにより、「歴史的名牝」の座は揺るぎないものとなった。